「針のむしろ」からの「鍼のむしろ」〜体メンテ〜深鍼で置鍼行ってきた
ここ20年の日々は、高圧で落ちてくる滝の水を掌ですくうかのようだった。音を立てて跳ね上がり、流れ落ちてしまった気がする。
「パトラッシュ…」と倒れ伏しても、朝がやってきて目が覚めて、人生は続いている。あれ?もしかしてこれが人生?
3年前からカタギの会社に務めていた。
コロナ禍になって世界が一変してからも、毎日通勤電車に乗り、人気のない東京駅で降りて、デジタルサイネージも消えた暗いシャッター地下街を抜けて通った。リモートワークって何?ワーケーション?それっておいしいの?なまま、雨にもまけず、風にもまけず、コロナにも罹らず、いつも静かに笑って通勤し、淡々と作業だけをこなす日々。回し車にのったハムスターのようで、全力で回し車を回し、地球の自転を早めている気がした。あら、もう朝だよ…って。
そして昨年末、つい…退職してしまいました。
「父さん!僕にもできないよ」
また、カタギになれなかった…。
父さんの座右の銘は「悠々自適」自由をこよなく愛する髪結の亭主だ。あたしゃ自由を愛する父さん似だった。
確かここ20年はものすごい激動の日々だったはずなのだけれど。
振り返ると、水が…引いていて…すべてが夢か幻のよう。
20年前からあらゆることが細切れ時間になり、何一つ集中できないまま、時のかけらがキラキラと、漆黒のブラックホールのようなものも渦巻きながらとっ散らかっている。
とまれ、世間とは2年遅れで突然自由な時間ができたのだった。
ワ〜オ!これがお家時間ってやつぅ?
ヒャッハ〜!何からやろうかな?
まずは、深く傷ついた心と体のメンテだ。
つぅことで、17の頃から知っている役者さんのお勧めのディープな鍼灸師の予約を取って行ってきた。体を酷使する舞台俳優のオススメは効くに違いない。
「久しぶりだそうなので、今回は横隔膜から上に60%ぐらいにとどめておきますね?」と優しい声でおっしゃる先生なのだが
頭にもぶっ刺す。
側頭葉にもぶっ刺す。
首にも肩にも背中にも深くぶっ刺し、ぐりぐり回す。
これのどこが60%なんでせう?大量の長針を深く筋肉までぶっ刺してくれる。
あごが緩み、よだれが垂れそうになった。
ひどい頭痛や肩こりがする時、頭痛の根本に釘を打ち込みたいと思うことがあるが、まさに釘をドンピシャで打ちまくってくれている。そしてそのまま30分!置鍼のまま放置!
この先生、お名前が釘抜(くぎぬき)先生とおっしゃるのだけれど、釘ぬかない…。可愛い顔して元柔道格闘家の柔術整復士さんで、カイロ施術も按摩マッサージ指圧もできる。東急東横線自由が丘駅徒歩10分
長年のキーボーディストとしての活動(PCの)による頑固な肩こりと、スマホっ首と、子どものころからの冷え性を改善すべく、通うことにした。鍼は回数を重ねるごとに増えて行き、2回めは103本、3回目は119本ぶっ刺してもらった。
初回施術後の3日はバッキバキの鍼ごわりと眠気に襲われたが、頭に鍼を刺すと視界は広がり、眼に塩が入ったかのようなショボショボ感が治まった。2回目、3回目も鍼ごわりが伴うが、回復が早くなった。背伸びをすれば足がつっていたのに、つらなくなった。
首はまだ、回すとバキッボリッジャリッと音をたてるので、4回目を予約しよう。軽くなってくれば、月に1度か隔月に1度で整うらしい。今はまだ集中治療。長年気づかぬふりをして放置していた凝りは、ゴリゴリに凝り固まっていて、マッサージに行っても「ここに何かいますね」と化石化した凝りを憐れまれ、鍼に行ってもサービス鍼を追加で打ってもらっていた。
随分前にぎっくり腰になったとき、数ヶ月整形外科に通っても取れなかった痛みが鍼で一発で治ってからというもの、もうあかん!って時には鍼にお世話になっている。
鍼は大量に打っていいらしい。著名人も多く通うこちらの先生の本を読むと、「健康な人にも鍼を打ってもらいたい」とのことで、私のような体は、体が鬱状態らしく、
眠り込み、鬱になっている身体をめざめさせるためには、身体の奥深くをしげきする"痛い鍼”が必要だ。眠りが浅ければ声をかけるだけでおきるだろうが、ぐっすり眠り込んでいる人は身体を揺さぶってやらなければ起きない。
そうである。筋肉が恐ろしく固くなっていて、繊維が複雑に癒着しているらしいので、鍼をぶっ刺して筋肉を緩め、組み立て直しているみたい。
この先生は海外旅行にも鍼を携帯して、機内で気分の悪くなったCAさんを鍼で治しちゃったエピソードや、不妊治療やヘルペス、ロケ本番前日にぎっくり腰になった芸人さんを鍼で治してバック転してた話など、武勇伝がすごい。
鍼ってすごいのね〜。
まだ3回目、寝た子を起こした感があるけれど、死滅した毛細血管を体中にもどすべく、深く、ぶっ刺してもらってきます。